「睡眠ってどんな状態を指すの?」
皆さんは、この様な質問をされたら、なんて答えますか?
そもそも、あなた自信が睡眠とはどんなものか知っていますか?
(ちなみに、「寝ている状態」では答えになっていませんよ。)
私たちの生活の基盤であり単純なことに見えて、意外と知らないことが多いものが「睡眠」です。
本記事はそんな睡眠の謎に迫っていくものです。
具体的には、以下の項目に絞って、睡眠を解明していきます。
- 睡眠全体について(定義、メカニズム、役割り等)
- 睡眠の質について
- 良質な睡眠をとるためのポイント
- なぜ睡眠の質が低下するのか
更に、良質な睡眠については5つのポイントをご紹介し、その理由までお教えします。
本記事を読んで、睡眠が私たちの身体にとって、どのような役割りを持つのかを知りましょう。
そして、これからご紹介する方法を実践し、同じ時間でもより良質な睡眠をとり、翌日に疲れを持ち越さず、すっきりとした朝を迎えられるでしょう。
目次
1 睡眠とは
では早速、睡眠とは何かという疑問にお答えしていきます。
睡眠の定義、メカニズム、役割り、自律神経との関係、ロング・ショートスリーパーについてなどを、順番にご説明します。
睡眠の定義
まず、睡眠の定義とは何かという点について、お話します。
そもそも睡眠に、明確な定義はあるのでしょうか?
実は、これは非常に難しい問題でもあり、専門家の間でも意見が分かれてしまうところです。
一般的には「脳の休止状態」や、「自発的に生じる静的状態」なんて言ったりします。
簡単に言うと、脳が休んでいるということです。
医学的には、意識がない状態のことを指します。
また生理学的には、以下の3点と定義を定めています。
- 脳を休息させる適応行動
- 生体防衛機能
- 大脳の情報処置能力を正常に働かせるための要(かなめ)
これらの状態のことを、我々は一言で「睡眠」と呼んでいるわけです。
分かりやすくまとめると、以下のようになります。
一般的 | 脳の休止状態 |
医学的 | 意識がない状態 |
生物学的 |
脳を休息させる適応行動 生体防衛機能 大脳の情報処置能力を正常に働かせるための要(かなめ) |
睡眠のメカニズム
睡眠のメカニズムとは、一言で説明すると「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の繰り返しです。
これは、90〜120分間隔で、交互に起こります。
入眠後、前半はノンレム睡眠、後半はレム睡眠となる時間が多くなる。
これは、翌朝に覚醒(目が覚める)状態に切り替えやすくするためです
この2つの睡眠の違いを、以下の表にまとめました。
レム睡眠 | ノンレム睡眠 | |
脳 | 活動している | 休息している |
眼球 | 動く | 動かない |
呼吸 | 増加/浅い | 安定/深い |
心拍数 | 不規則 | 少なく安定 |
レム睡眠
身体は休んでいますが、脳は動いており、比較的浅い眠りになります。
記憶の整理、定着はレム睡眠時に行っております。
夢などを見るのも、このときです。
レム睡眠時には、心拍数・呼吸数が増加し、不規則になります。
ノンレム睡眠
レム睡眠とは逆に、ノンレム睡眠時には、脳は完全に休息している状態です。
呼吸数・心拍数はともに安定し、深くゆったりとした呼吸になります。
睡眠の役割
睡眠には記憶の定着も含め、実に多くの役割りがあります。
特に大きな役割を3つご紹介します。
①脳の休息
先程もご説明したように、睡眠の最も重要な役割は、脳を休めることでしょう。
しかし睡眠時にも脳は、ただ休んでいるだけではありません。
脳の老廃物である「アミロイドβ」というタンパク質を、寝ている間に排出しています。
このアミロイドβとは、アルツハイマー症の原因と言われているタンパク質なため、しっかりと排出することが必要です。
②記憶
前述したとおり、睡眠は記憶の整理と定着にとっても、非常に重要です。
必要な記憶と不要な記憶を分け、必要な記憶のみを定着させ、不要な記憶は抹消していきます。
よく学習の面でも、暗記の必要があるものは、夜にやった方が良いと言われているのはこのためです。
③ホルモンの調整
睡眠時には、成長ホルモンが多く分泌されます。
この成長ホルモンとは、子どもだけに関係していることではありません。
大人にとっても、成長ホルモンは無くてはならないものです。
アンチエイジング効果、身体中に傷んだ細胞の修復、新陳代謝のサポートなど、あらゆる働きを見せるもの、それが成長ホルモンです。
「ロングスリーパー」と「ショートスリーパー」って?
睡眠の話題と絡めて、よく耳にするのが「ロングスリーパー」と「ショートスリーパー」です。
この2つのタイプには、それぞれどのような特徴があるでしょうか。
個別に見ていこうと思います。
ロングスリーパー
1日の睡眠時間を長くとるのが「ロングスリーパー」です。
ロングスリーパーには、以下のような特徴があります。
- 睡眠時間が10時間を超える
- 寝付きが悪く、夜中に目を覚ましやすい
- 起床時の不快感が強い
長時間の睡眠が必要となるため、効率はあまり良くありません。
ロングスリーパーとなるはっきりとした原因は分かっていませんが、遺伝や体質といった面が大きいと思われています。
しかし、なかにはストレスなどから、ロングスリーパーになる人もおり、専門医のいる睡眠外来などの受診もおすすめします。
ロングスリーパーは、睡眠の質を向上することで、改善されることもあるようです。
ショートスリーパー
ロングスリーパーとは逆に短時間の睡眠でも、日中のパフォーマンスや健康に影響しないという人を「ショートスリーパー」といいます。
睡眠が6時間未満でも、日中に十分活動することができるため、効率的と言えます。
しかし注意すべき点として、あくまでも健康状態に異常のない人が「ショートスリーパー」なのであり、これは寝不足とは異なります。
また、体質なども関係しているた、無理にショートスリーパーになろうとすることも、避けたほうが良いでしょう。
2 睡眠の「質」
さてここからは、「睡眠の質」について、話を進めていきます。
まず初めに、「自分の睡眠が、良質なのかどうかわからない!」という人に向け、以下の3つの点を明記しておきます。
普段の自分と比較しながら、確かめてみてください。
- 寝付きが良い(寝ようとしてから30分前後で眠れる)
- 夜中に目が冷めず、朝までぐっすり眠れる
- 寝起きはスッキリしている
3つ全てに当てはまっている人は、良質な睡眠がとれていると言ってよいでしょう。
1つでも、当てはまらなかったものがある人は、ここからが必見です。
睡眠の「質」って何?
そもそも、睡眠の質ってなんでしょう?
「質」と言われても漠然としていますよね。
そこで、もう少し具体性のある言い方に変えると「あるタイミングで深い睡眠をとれているか」ということです。
あるタイミングとは、入眠後、初めのノンレム睡眠です。
これを「黄金の90分」と言います。
黄金の90分の間に何が起こっているのでしょう?
このタイミングでは、睡眠時に分泌される成長ホルモンのうち、70〜80%が作られています。
黄金の90分で、しっかり寝れていないと、自律神経が整わなかったり、疲労を翌日に持ち越してしまいます。
つまり「何時間眠れたか」ということ以上に、「黄金の90分でどれだけしっかり眠れたか(=睡眠の質)」が重要となるわけです。
とはいっても、短すぎても良いということではありません。
最低限(6時間ほど)は、確保するようにしましょう。
「自律神経」と「睡眠の質」
まず、自律神経とは、自らの意思とは無関係に「自律して」身体の各臓器をコントロールしている神経です。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があります。
「交感神経」は、昼の自律神経で、脳を「緊張モード」にします。
「副交感神経」は、夜の自律神経で、脳を「リラックスモード」にします。
また自律神経は、体内時計と完全に連動し、それによって上記の2つが入れ替わります。
2つがしっかり交代しているかどうかが、睡眠の質を上げる上で、重要な点になります。
緊張モードでは、しっかりと脳を休めることが出来ないことは、みなさんも想像がつくでしょう。
良質な睡眠をとるメリット
では睡眠の質を上げると、どんな良いことがあるでしょう。
ざっと挙げるだけでも以下のように、実に多くの「嬉しい効果」があることが分かります。
- 目覚めスッキリ、日中眠くならない
- 集中力アップ
- 脳が活性化(=日常のパフォーマンスアップ)
- ストレスを解消する(抑うつ状態を防ぐ)
- 記憶の定着
- 生活習慣病の予防
- 美容の促進、美肌効果
目覚めが良くなる、脳が活性化されることはもちろんですが、ストレスを軽減する効果も期待できるという点は、あまり知られていないのではないでしょうか?
しっかりとした睡眠が取れていないと、精神的にも異常が起こるということが、お分かりいただけたでしょう。
3 良質な睡眠をとる5つのポイント
ここまでで、睡眠において重要なことは「質」であると、お分かりいただけたでしょう。
ではここからは、肝心の「どうしたら睡眠の質を上げることができるのか」という点を5つ、ご説明します。
①食事
食事(特に夕飯)においてのポイントは「就寝の3時間前までに」と「夕飯にはタンパク質が良い」の2点です。
「3時間前まで」という理由は、就寝時に消化活動が終わっている状態にするためです。
消化が終わってないと、体内で消化を優先するために、睡眠をとっても、内臓が十分に休めません。
このようなことが続いてしまうと、内臓の疲れが蓄積され、様々な不調へと繋がります。
「夕飯にタンパク質を」という理由は、夕飯にタンパク質を摂取することで、身体の修復材料や良質な睡眠に欠かせない「セロトニン」が豊富に作られるためです。
②体温の調節
体温に関するポイントとしては、「飲み物」と「入浴」の2点に注目して、お話していきます。
まず「飲み物」ですが、おすすめは「白湯・カモミール・生姜湯」です。
これらには、身体を温める成分が豊富に含まれているため、良質な睡眠へと導いてくれます。
またカモミールには、リラックス効果もあるため、寝る前にはもってこいの1杯です。
入浴ついては、38℃前後の湯に5〜10分は浸かるようにしましょう。
緊張を解き、身体をリラックスさせることが出来ます。
さらに、入浴の時間にもひと工夫。
就寝時間の90分前には済ませておくと良いです。
身体を温める理由
ではなぜ、身体を温めると良質な睡眠へ繋がるのでしょうか。
人間の体は、体温が下がる瞬間に眠気を感じます。
つまりタイミングを計算して、体温を上げておくと、自然な眠気を引き起こすことが出来ます。
入浴を就寝時間の90分前までに、済ませておくと良いという理由はここにあります。
③生活のサイクル
生活のサイクルについてのポイントは「平日と休日で生活リズムを変えないこと」です。
つまり、どういうことか。
簡潔に言うと、「平日も休日も、同じ時間くらいの時間に起き、寝ること」です。
そうすることで、身体にリズムができ、夜は自然に眠気が起き、朝も自然に目が覚めるというサイクルが出来上がるというわけです。
よく、「月曜日はだるい」という声を聞きます。
これは、仕事が始まるという精神的なことにも起因しますが、土日で乱れた生活リズムを無理矢理、平日のリズムに変えている事も原因となります。
なので、休日だからと夜ふかししたり、昼ごろまで寝てるという生活を改めることから始めましょう。
④起床直後のひと工夫
起床直後から、その日の睡眠のために出来ることがあります。
それは「日光を浴びること」です。
それだけ?と思うかもしれませんが、これにはしっかりと理由があります。
朝起きて、しっかりと日光を浴びることで、脳内で分泌されている「メラトニン」という眠気を誘う成分を、食い止めることが出来ます。
メラトニンを、しっかりとメリハリを付けて分泌させることが、夜にしっかりと睡眠をとる上で重要となります。
⑤ブルーライトとの付き合い方
1日中ネットを使っている人が多い現代社会では、スマホやPCなどから発せられる「ブルーライト」との付き合い方も、考えなければいけません。
ブルーライトの波長は、太陽の波長と似ているため、脳を刺激します。
それだけでなく、脳が昼間になったと勘違いを起こし、覚醒してしまいます。
なので、寝る前の使用は控えたほうが良いでしょう。
理想は、就寝1時間前までに使用を終えると良いでしょう。
“寝具の色で眠気を誘う!?”
日常的に行うことではありませんが、シーツやベッドカバーなどの寝具でも、より良い質の睡眠をとるための工夫をすることはできます。
ポイントは「寝具の色」です。
色には、感情をコントロールする力があり、これを研究してる「色彩心理学」というものさえ存在します。
ここで、寝具にお勧めの色を3色ご紹介します。
①緑色
緑には癒やし効果があり、見る人に安心感を与えます。
暖色でも寒色でもない「中間色」と呼ばれる緑は、低刺激でもあるので寝具にはぴったりです。
②茶色
木、土などの自然を連想させため、緊張を和らげる効果があります。
またインテリアとしても、主張が強くないため、寝室全体を落ち着いた雰囲気にすることができます。
③青色
心身を落ち着ける色の代表的な青色は、高ぶった感情(イライラ等)を抑え、安らかな気持ちへと変えてくれます。
また、涼し気な雰囲気を演出するため、夏は特におすすめです。
※逆に、赤・黒・紫など刺激的な色は、寝室には向いていないため、避けるべきでしょう。また、カラフルな部屋も刺激が強いため、3色までに留めましょう。
4 睡眠を阻害するアレコレ
では最後に、睡眠の質を下げてしまうものご紹介します。
睡眠の妨げとなる行動は以下の4つです。
- 就寝前の激しい運動
- 寝る前の食事
- シャワーだけで済ます
- 就寝直前までお酒を飲む
特に、お酒はアルコールが分解されるにつれ、交感神経が優位になるため、眠りが浅くなります。
また、アルコールには利尿作用もあるため、夜中に何度も目が覚めてしまうこともあります。
なので、お酒は就寝時間の3時間前までに、切り上げることをオススメします。
“睡眠負債とは?”
「睡眠負債」とは、日々の睡眠が足りず、寝不足が積み重なっていくことを言います。
睡眠負債が増えると「マイクロスリープ(=瞬間的居眠り)」という状態になります。
マイクロスリープとは、1〜10秒ほどの、ごく短時間だけ眠りに落ちてしまうことです。
ほんの一瞬の出来事なため、本人にも周囲の人にも気づくことが出来ません。
また、本人の意思とは無関係なため、運転中などでも起こる可能性があり、命の危険が生じます。
5 最後に
いかがでしょうか?
睡眠全体について(定義、メカニズム、役割り等)から始まり、睡眠の「質」、良質な睡眠をとるポイントや、睡眠の質を低下させる行動などを、ご説明しました。
睡眠とは単純なことの様で、意外と複雑なメカニズムを成していますね。
皆さんもどうせ同じ時間を眠るなら、少しでも良い質の睡眠が取れる様に、工夫してみましょう。
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