がん

2020.5.26

抗がん剤はがんを殺すのか? 抗がん剤4つの種類

現在のがん治療において「抗がん剤」は標準治療としてメインの治療法となっています。

保険がきく手術、放射線、化学療法(抗がん剤)のうち、唯一の全身療法です。

 

「抗がん剤は副作用が怖い」

「髪が抜ける」

 

というイメージがる方もいるかもしれません。

実際のところ抗がん剤とはどんなものなのでしょうか?

 

この記事では抗がん剤の全体像をご説明します。

「こういう戦略で抗がん剤を考えればいいのか」と理解していただけたら幸いです。

 

抗がん剤

 抗がん剤には

・殺細胞薬剤

・ホルモン剤

・分子標的薬

・免疫チェック・ポイント阻害薬

 

と4種類あります。

これらを総称して抗がん剤といいます。

 

抗がん剤と聞くとがん細胞を直接狙う薬とイメージされると思います。

 

では、質問です。

 

ここにシャーレで培養しているがん細胞があるとして、そこに抗がん剤を入れるとがん細胞はどうなりますか?

 

「がん細胞が死ぬ」と答える方が多いのではないのでしょうか。

 

 

実はがん細胞は死にません。

では、がん細胞はどうなるのか。

なんの為に抗がん剤治療を行うのか。

4種類ある抗がん剤のそれぞれの特徴は?

 

などといろいろな疑問が出てきますね。

 

そういったところを順に説明していきます。

殺細胞薬剤

 

まずは4種類あるうちの1つ、殺細胞薬剤について説明します。

 

がん細胞も正常な細胞も増え方は同じですが、増えるスピードは正常細胞よりもがん細胞のほうが速く増えます。

 

細胞を見ると、中心にある球体に遺伝子が入っていてそれを核と呼び、

周りを壁のように囲んでいるものを細胞膜、核と細胞膜以外の部分を細胞質と呼びます。

 

つの細胞が2つに増えるためにはその遺伝子を2つに分けないといけません。

細胞を増やすためにまず、核の中に入っている遺伝子を2倍にします。

その後、遺伝子が両端に整列し周りの細胞膜にくびれができ始め、最後には2つの細胞に分かれます。

このような分裂の仕方を正常細胞もがん細胞も行っています。

 

分裂をしている間、遺伝子を持った核は細胞質の中に散らばっています。

その時に薬が入ってくると2つに増えようとしている遺伝子にくっついて細胞分裂の邪魔をします。

邪魔をされた細胞はそれ以上細胞分裂をすることができなくなるのでそれ以上増殖することを防ぐことができます。

それが殺細胞薬剤です。

 

先程の質問に戻りますが、

「ここにシャーレで培養しているがん細胞があるとして、そこに抗がん剤を入れるとがん細胞はどうなるか?」

の回答は

「がん細胞が増殖していればがん細胞は死ぬ。」

となります。

がん細胞が増殖しようとしていないタイミングで投与しても効果はありません。殺細胞薬剤は投与するタイミングが大事です。

 

「がんに勢いがある」

「このがんは進行が速い」

と先生が判断された時に殺細胞薬剤を使用されることが多くなります。

 

気を付ける点は、がん細胞だけでなく正常細胞の増殖も防いでしまうという点です。

髪の毛や粘膜や腸などは他の正常細胞と比べて増殖のスピードが速いため

副作用で髪の毛が抜けるというのは、殺細胞薬剤によって髪の毛が増殖するのを防がれていることが原因で起こる、ということになります。

 

ホルモン剤

細胞は増えるという話をしましたが、細胞が勝手に増えるわけではありません。

「増えろ」という指示があって増えます。

 

傷ができたときに、「傷を塞げ」という指示を出すスイッチを押すことによって細胞が増殖をはじめ傷を塞いでいく、

という仕組みがあるとイメージしてみてください。

 

その指示を出すスイッチを押さないとどうなるでしょうか?

「傷を塞げ。」と言う指示が出されないので細胞が増殖せずに傷は開いたままになります。

 

がん細胞も同じです。

細胞を増殖させるスイッチが押されることによってがん細胞は増殖していくので

スイッチを押させないようにすればがん細胞は増殖しなくなります。

 

ではなにがスイッチを押しているのか。

 

それは男性ホルモンや女性ホルモンです。

 

例えば、男性ホルモンがスイッチを押しているのであればそれに拮抗する女性ホルモンを入れてあげましょう。

反対に、女性ホルモンがスイッチを押しているのであればそれに拮抗する男性ホルモンを入れてあげましょう。

または、そのホルモンを止めるような薬を使ってあげましょう。

 

というふうにがん細胞の増殖を防ぐのがホルモン剤です。

 

分子標的薬

分子標的薬はホルモン剤の考え方と非常に近いです。

ホルモン剤は前立腺がんや乳がんなど、男性ホルモンや女性ホルモンに反応する細胞の時に使用されますが

分子標的薬はその様なホルモンとは関係のない細胞に使用されます。

 

例えば、転んでしまって傷ができてしまった。

 

傷ができると炎症反応が出ます。

 

炎症反応が出たことによって

「炎症を抑えないといけない」

「傷を治さないといけない」

と体中から細胞へ指示が出ます。 

 

その指示を遮(さえぎ)るのが分子標的薬です。

 

細胞にその指示を受け取るための手があるとイメージしてみてください。

正常細胞はその手が1つなのに対して、がん細胞は千手観音のように沢山の手を持っていて

小さな指示も貪欲に受け取り細胞を早く増殖しようとします。

 

では、その手に指示がいかないようにするにはどうすればよいのでしょうか?

 

1つは、指示を受け取る手を塞ぐ。

もう1つは、受け取った指示が細胞に行くまでに途中で遮断してしまう。

という方法があります。

 

塞ぐ方法と遮断する方法では薬の大きさなどの違いはありますが分子標的薬は、

「がん細胞を殺さないが、増殖する流れを止める。」

 

というのが目的となります。

 

 

 

 

 ここまで

 

・殺細胞薬剤

・ホルモン剤

・分子標的薬

 

と説明させていただきましたが

それぞれに共通しているのは

 

薬の効力でがん細胞の増殖を防ぐ

 

ということが目的です。

 

 

しかし、最後にお伝えする「免疫チェックポイント阻害薬」は殺細胞薬剤・ホルモン剤・分子標的薬とは考え方が全然違います。

 

免疫チェックポイント阻害薬

 

免疫チェックポイント阻害薬は、殺細胞薬剤・ホルモン剤・分子標的薬とは考え方が全然違います。

 

今までの説明はがん細胞が主役でしたがここからの説明は免疫細胞が主役になります。

 

免疫細胞の中にも、自然免疫と獲得免疫の2種類があって、

 

自然免疫とは先天的に備わっている免疫で、免疫細胞が自分と自分以外(非自己)を認識することで

非自己である病原体をいち早く認識し、攻撃することで病原菌の排除を行います。

 

獲得免疫とは後天的に得られる免疫で、一度侵入した病原体の情報を記憶し

再び侵入された時に一早く対処できるよう学習することができます。

がん細胞には対してはどちらかというと自然免疫が攻撃します。

 

免疫細胞は正常細胞ががん細胞になるかを見分けて攻撃してくれるので、普通の人はがん細胞にはなりませんが

がん細胞が出しているある物質が原因で免疫細胞がうまく働かず、働きが鈍くなってしまい

がん細胞に対して攻撃をするはずの免疫細胞が、逆にがん細胞に攻撃されてしまいます。

そこで、免疫細胞にがん細胞から出る物質をつかないようにするのが免疫チェックポイント阻害薬です。

 

免疫チェックポイント阻害薬を使用することで、免疫細胞の働きが活発になりがん細胞に対して攻撃してくれるようになります。

 

ではまたここで質問です。

 

シャーレに入ったがん細胞に免疫チェックポイント阻害薬を入れました。

がん細胞はどうなるでしょう?

 

答えは、がん細胞は死なない。

 

免疫チェックポイント阻害薬はがん細胞に働くのではなく、

免疫細胞の働きを活性化してがん細胞を攻撃しがん細胞を殺すものなので、

がん細胞だけのところに免疫チェックポイント阻害薬を入れてもがん細胞には何の影響もありません。 

 

まとめ

 ここまで4種類の抗がん剤についての説明をしてきましたが

共通して言えるのは

 

抗がん剤だけではがん細胞は無くならない

 

と言う事です。

 

抗がん剤=がん細胞を直接殺してくれる薬

 

と思われる方が多いと思いますが

実際は、がんの増殖を抑える薬、

または、がん細胞を殺すのを手助けしてくれる薬、

なのです。

 

これらのことを理解しておくことで

自分の病状に対して

「先生はこの抗がん剤をこういう判断で使っているんだ」

「この薬はここを狙っているんだ」

 

ということが理解できるようになります。

 

 

抗がん剤治療を行う上で、先生は薬の強度や薬のリスクなど色々な事を考えながら計画を立ててくれます。

その内容をご自身で記録されることをおすすめします。

 

抗がん剤は入院して点滴で2,3日やった後に1週間あける、などの様に病院から離れる休薬期間があります。

休薬期間を把握しておくことで、その間にやっておきたい仕事をしたり、家族サービスを行ったり

セカンドオピニオンを聞いてみたりと色々な計画を立てることができます。

 

また、抗がん剤治療を行うと副作用が出ることがありますが

副作用を抑える為にサプリメントを摂るという選択肢もあります。

何が良いのか説明を聞いておくと良いでしょう。

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