動脈硬化

2018.9.28

動脈硬化とはどんな病気?|5大危険因子を自分で全滅させよう!

日本人の4人に1人が死亡している。

一体何が原因で、これほど多くの人が命を落としているのか、みなさんは知っていますか?

これは2012年に「一般社団法人“日本生活習慣病予防協会”」が公式サイトにて発表した、動脈硬化による死亡者の割合です。

(参照:http://www.seikatsusyukanbyo.com/statistics/2012/003548.php

正確には、動脈硬化による心臓や脳の疾患で死亡した人の割合です。

これほど多くの人の命を奪う「動脈硬化」とは、一体どのようなものでしょうか?

本記事では以下のことを中心として、みなさんに動脈硬化について知って頂くべく、ご説明していきます。

  • 動脈硬化の症状、進行過程(メカニズム)
  • 合併症
  • 原因とされる「5つの危険因子」
  • 危険因子の予防・改善法
  • 病院での治療法と検査方法

なかでも“5つの危険因子”を自力で失くす方法については、さらに一段階踏み込んだ内容です。
ですから、動脈硬化についての知識を持つと同時に、自分自身でも予防・改善するための、手助けとなるでしょう。

また、もし病院で治療を受けるとしたら、具体的にどの様な治療方法が採用されているのか等を知ることも重要です。
それによって、自力での実践と病院での治療、どちらか自分にあった方法を選ぶ事ができます。

1 動脈硬化ってどんな症状?

では初めに、動脈硬化とはどのような病気なのかという点を、初期症状→進行過程→発症の分布の順で、ご説明していきます。

動脈硬化とは?

まず動脈硬化とは、どのような病気なのでしょうか?

動脈硬化を簡単にご説明すると、“動脈の壁が厚くなったり、硬くなることによって血管の様々な働きが悪くなる病変の総称”です。

(正しくは、動脈硬化とは病理学的な呼び方であって、病名ではありませんが、ここでは一般的な認識に習い、「病気」と表記します。)

実は動脈硬化の中にも、様々な種類があります。
しかし、大多数が「粥状動脈硬化」なので、一般的に「動脈硬化」というとこれを指します。

※粥状とは、お粥のようにドロドロとした状態の血液を表します。

症状について

症状については「初期症状」と「進行後の自覚症状」に分けてご説明していきます。

初期症状について

動脈硬化は「沈黙の病気」とも言われている通り、初期段階での自覚症状が、殆ど無い病気として有名です。
そのため知らないうちに病気が進行していて、自覚症状が出る頃には、かなり重篤化していることが非常に多いです。

進行後の自覚症状について

自覚症状が出る頃には重篤化しているとご説明しました。
しかし、なかには自覚症状にも気づくことができない人もいます。
合併症」等(後ほど説明します)になってから初めて気づくという場合もあるため、すぐに命の危険という事態にもなりかねません。

また自覚症状に気がつけていても、動脈硬化とは結び付けられないケースもあります。
(例えば、足の痛み等は足そのものに原因があると考えてしまう。)
一見、血管に起因しているとは思い難い症状もあり、つい放置してしまうのです。

では、動脈硬化による自覚症状を疑うべきは、どのような症状なのでしょうか?

自覚症状の分布

動脈硬化による症状の多くは、心臓・脳・足に表れます。
それぞれ、具体的にどのような症状が見られるのか、以下の表でまとめました。

心臓

・階段で動悸

・少し動いただけで息苦しい

・疲れやすい

・めまい

・頭痛

・耳鳴り

・発音しにくく、言葉を忘れやすい

・冷え、しびれ

・原因不明な痛み

・傷が出来やすく、治りにくい

このような症状がある場合は、速やかに「循環器内科」の受診をおすすめします。

進行過程について

次に進行過程について、以下の図の沿ってお話します。

正常」と書かれているもの(一番上)をご覧ください。

体内の血管は、動脈も静脈も関係なく「内膜・中膜・外膜」からできています。

血管と直接触れている「内膜」には内皮細胞という細胞の層が存在します。

1つ下の絵を見るとわかるように「内膜」に、かゆ状の病変である「粥腫(しゅくしゅ)」が発生し、血管の内側が狭まっていきます。

通り道が狭くなるなり、そこへ無理に血液を流すため「内皮細胞」が壊されます。
そして、その欠片が「血栓」となって血管を塞ぎ、様々な合併症を引き起こします。

血栓によって血管が完全に詰まると、「急性心筋梗塞」を引き起こします。

粥腫の進行過程

「粥腫」が動脈硬化の直接的な原因であることは、お分かり頂いたでしょう。

では、この粥腫はどのように出来てしまうのでしょう?

ここからは以下の図を用いて、説明を進めます。

一番上から順に見ていきます。

初めに、心臓や血管に様々な悪影響(後に説明する、5大危険因子など)が与えられ、「内皮細胞」が刺激され傷害を受けます。

すると、血中の単球(白血球)が内皮細胞にくっつきます。
そして細胞の間から、溢れ出て内膜へと侵入し、「マクロファージ」という状態になります。

血中コレステロールが多いと、このマクロファージがさらなる脂肪物質を呼び寄せ、内膜が益々分厚くなっていきます。

さらなる時間の経過とともにマクロファージも崩壊し、粥状になります。これが「粥腫」の正体です。

発症の分布

次に、動脈硬化が起こる分布についてご説明します。

動脈硬化と内膜が、密接に関係していることは明白です。
なので、内膜が発達している血管であればあるほど、動脈硬化になりやすいと言えます。

具体的には、心臓冠状動脈)・大動脈頚部腎臓内臓手足などです。

2 動脈硬化に起因する疾病

ここでは命の危機に直結する、動脈硬化が重篤化することによって、考えられる「疾病」について、3つご説明します。

①下肢(足)の壊死

動脈が硬まると、閉塞して栄養分が行き届かなくなります。

壊死の重症度はⅠ〜Ⅳ度に分かれており、Ⅲ度以上から、手足切断のリスクが高まります。

Ⅰ度では自覚症状は殆どなく、Ⅱ度になると一定距離歩いたときの痛みなど自覚症状が出始めます。
Ⅲ度では安静にしていても痛みが生じ、Ⅳ度になると細胞が生きていくため必要な血流が供給されず、潰瘍(かいよう)ができたり、黒く変色します。

さらに菌が侵入し、感染症を引き起こすと、他の部位に菌が回ってしまうことを防ぐため、切断が必要となる可能性があります。

②心筋(脳)梗塞

血管が塞がることで心筋に血液が送られず、心臓を動かすために必要な血液量が足りていない状態の心筋虚血となります。
さらにその状態が続くと心筋が壊死し、「心筋梗塞」となります。

心筋梗塞の前段階(心筋虚血)に、心臓からのSOS信号として、胸痛や胸の圧迫感が生じます。これがよく耳にする「狭心症」です。

通常の心筋梗塞では、胸が焼けるように重苦しくなり、冷や汗が出ます。
さらに吐き気を催すこともあります。

しかし無痛性心筋梗塞という、痛みなどを感じないこともあります。
この場合、心不全となって初めて発見されることが多く、処置が遅れると死を招きます。

これが脳の血管で起きると「脳梗塞」と呼ばれます。

③大動脈瘤

大動脈は、人体の中で最も太い血管です。

大動脈瘤とは、この大動脈の一部がこぶ状」に膨らんだ状態を指します。

殆どの方が、自覚症状がないままに進行しています。

この瘤(こぶ)は、放置し時間の経過とともに肥大し、最終的には破裂します。
すると破裂箇所から大量に出血し、激しい痛みと同時に、ショック状態となります。
ここまで重篤化してしまうと、緊急手術しか救命の道はありません。

定期的な健康診断を怠らず、大動脈瘤が出来ていても早期発見をし、医師の判断による、適切なタイミングで手術が受けられることが重要です。

3 5大危険因子

動脈硬化の最大の原因となる事柄を合わせて「5大危険因子」と呼びます。

ここでは、5大危険因子とな、具体的にどのようなことが含まれるのか、ご説明します。

高血圧

まず初めは「高血圧」です。

高血圧は、アメリカでは「サイレント・キラー」と呼ばれているほど、危険とされています。

主な原因は、塩分の摂りすぎや肥満です。

肥満は、それ自体も5大危険因子に含まれ、さらに高血圧をも引き起こすため注意が必要です。

また、日本人は「3人に1人が陥っている」と言われるほど、高血圧が身近なものです。
それは、日本が塩分過多な食文化であることが大きな原因です。

高脂血症

高脂血症」とは、血液中の脂肪分が高いことを指します。

特に、総コレステロール・悪玉コレステロール・中性脂肪は、より血管の硬化を促してしまいます。

欧米の食文化になったことで、動物性脂肪の摂取量が上がり、同時に車社会なため現代人の運動不足が深刻化しています。

喫煙

喫煙」が体に悪いことは、もはや全世界の共通認識と言えます。

1日20本以上タバコを吸う喫煙者は、非喫煙者よりも虚血性心臓病の発生率が50〜60%も上昇します。

さらに喫煙は、他の危険因子にも影響を及ぼし、総コレステロール値・悪玉コレステロール値を高め、善玉コレステロール値を下げてしまいます。

つまり肥満と同様に、二重のリスクがあるということです。

 

ちなみに、高血圧・高脂血症・喫煙の3つを合わせて「3大危険因子」とも言います。

肥満

ここで言う「肥満」とは、BMI値から判断したものを言います。

日本肥満協会の基準では「19.8〜24.2」は正常、「24.2〜26.4」は体重過多、26.4以上」で肥満と定めています。

繰り返しになりますが、肥満は高血圧の原因にもなるので、適度な運動、余分な脂質・糖質の摂取は控えることが大切です。

糖尿病

糖尿病」の発症には、食生活を始めとした、様々な要因が関係しています。

また遺伝的要因もあり、家族内に糖尿病を患った人がいる場合は、より注意した生活習慣を送る必要があります。

4 セルフ予防・改善策

ではこれらの危険因子は、どのように無くしていけば良いのでしょうか?

ここでは、日常の中で出来る予防方法、改善方法をご紹介します。

「高血圧」の予防・改善方法

高血圧を予防・改善するうえで重要なポイントは、食生活生活習慣を見直すことです。

食生活の見直しは、減塩】と【カリウム・マグネシウムの摂取を中心にやっていきましょう。

【減塩】のコツは、以下の通りです。

  • 醤油やソースはレモンなどで代用
  • 出汁は天然のもの(昆布・カツオ)を使う
  • ラーメン、そば、うどんの汁は全部飲まない
  • 薄味に慣れる

カリウムとマグネシウムは【野菜、海藻類、豆類】を食べると、たくさん摂取できます。

生活習慣の見直しは、運動をすることが最も大切です。

運動のポイントは以下の通りです。

  • 1日30分以上
  • 週に3〜4日以上(理想は毎日)

ウォーキング、サイクリングなど(有酸素運動)が手軽でおすすめです。

「高脂血症」の予防・改善方法

「高脂血症」には3つのタイプがありますが、どれも最も重要なことは「食生活」です。

では、それぞれのタイプごとに、予防・改善を目指せる食生活をご説明します。

①悪玉コレステロール値が高い

悪玉コレステロール値が高い人が気をつけるべき、食生活は以下の通りです。

  • (肉の代わりに)魚、大豆を食べる
  • 卵、バター、ラードは控える
  • 洋菓子は控える(和菓子ならOK)
  • 緑黄色野菜、海藻類を積極的に摂る

肉類を食べるのは、週2〜3回に留めましょう。

②総コレステロール値が高い

総コレステロールが高いタイプの、高脂血症の場合には2つの気をつけるべきポイントがあります。

  • 夕食に油ものは避ける
  • 肉類を控える

以上の2点です。

野菜、魚を中心とした食生活を心がけましょう。

③中性脂肪が多い

中性脂肪が高い場合の、高脂血症は以下の4つの点に注意しましょう。

  • アルコールの量と頻度を減らす
  • 糖分を控える(洋菓子、砂糖入り飲料、果物など)
  • 脂肪魚(イワシ、サバ、サンマ)を、週に7切れ以上は食べる
  • 夕食のボリュームを控える

以上です。

「喫煙」の予防・改善方法

タバコに含まれる「ニコチン」の依存性の強さはドラッグ(覚せい剤、麻薬)よりも強いと言われています。

喫煙者が言う「タバコをやめたくても、やめられない」という言葉は、よく耳にしますよね。
これは、「ニコチン依存症」という精神病だからです。
なので、本人の意志だけでは難しいでしょう。

まずは、自分自身が病気であると認識をすることが重要です。

一人で悩まずに、専門家に助けを求めることも良い方法だと思います。

(禁煙外来の公式HP:https://sugu-kinen.jp/

「肥満」の予防・改善方法

肥満の予防・改善には、食事と運動の面からアプローチしていきましょう。

食事面では、以下のことに気をつけましょう。

  • 夜間に食べない
  • よく噛んで食べる
  • 栄養バランスを考えて食べる
  • 飲み物から糖を摂らない
  • 間食は控える

運動面では、主に「高血圧」と同じ様に改善することが出来ます。

「糖尿病」の予防・改善方法

糖尿病の、予防・改善方法はカロリーを抑えることと、運動です。

野菜、魚、大豆類を中心とした食生活にしましょう。

また、なるべく階段を使う等、日常の些細なことから改善していきましょう。

5 病院での処置方法

ここまでは、普段の生活の中で出来る予防・改善方法を、ご紹介しました。

ここからは、病院ではどのような検査で、どんな処置をしてもらえるのかという点について、ご説明します。

検査方法

動脈硬化どうか、病院ではあるゆる検査方法を用いて調べます。

まず初めに、上記でも紹介した「危険因子」の有無を調べます。

項目としては以下の6つです。

  1. 血圧
  2. 空腹時の血液脂肪
  3. 空腹時の血糖
  4. 喫煙歴
  5. 血液の尿酸値
  6. 身長、体重、ウエストとヒップの周囲計

上記で動脈硬化の疑いがあると判断された場合は、更に詳しい検査を受けます。

検査は以下の方法を用いて進めていきます。

  • 心電図
  • 眼底検査
  • 血圧の比較(上腕動脈と足関節上部で比べる)
  • 脈拍の触れ方

既に症状が出ている人

もう既に、何らかの症状が見られる場合は、どの程度の進行具合なのかを、いち早く知る必要があります。
なので通常とは異なり、疑わしい分布によって以下のような検査をします。

  • 【冠状動脈】血管内エコー、シンチグラム、MRI、血管内視鏡、冠状動脈造形
  • 【脳動脈】シンチグラム、MRI、脳動脈造形
  • 【頸動脈】エコー、血管造形、MRI
  • 【大動脈】CT、MRI、エコー、大動脈造形
  • 【下肢静脈】シンチグラム、エコー、脈波、血管造形

このように、部位ごとに検査方法も差異があります。

ですが、動脈硬化を放置しておくと、命を脅かす程の重大な疾病にも繋がるので、しっかりと細部まで検査しておきましょう。

治療法

では上記のような方法で検査した結果、動脈硬化の疑いが有りとなった場合、病院ではどの様な治療を進めていくのでしょうか?

治療方法は大きく分けて3つ、「薬物治療・血管内治療・外科的処置」があります。

では、それぞれ見ていきましょう。

薬物治療

薬物治療では、血液をサラサラにしたうえで、血管を拡げることを目指します。

種類は、内服薬注射薬の2種類があり、どちらを使用するかは、医師の判断によって変わります。

血管内治療

血管内治療」とは、狭くなった血管を拡げて血管の流れを改善するため、血管内を直接的に治療する方法です。

大きく分けて以下、3つの方法があります。

  1. バルーン法
  2. ステントの挿入
  3. アテレクトミー

バルーン法】は、風船のついた管を、血管に入れます。
そして、血管内で膨らませ、血管の幅を確保します。

ステントの挿入】は、バルーン法と似ていますが、バルーンではなく、器具を血管内に挿入します。
器具によって、血管を内側から支えます。

アテレクトミー】とは、器具で血管内で詰まった部分を削り、血流を流します。

外科的処置

外科的処置では、主に「バイパス手術」をします。

バイパス手術とは、人工血管や自身の静脈を使い、新しい道を作って血流を保ちつ方法です。

6 さいごに

いかかでしょうか?

動脈硬化について、症状・進行のメカニズム・5大危険因子とその予防、改善方法・病院による処置、検査方法などをご説明しました。

血管の詰まりは、予防や改善方法から見てもわかるように、日常をいかに注意した生活が出来るかにかかっています。

地道な努力を怠らないように、頑張りましょう。

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