曽我
こんにちは
中村
こんにちは
曽我
今日もですね、がんサポートドクターの中村先生に色々お話を伺っていきたいと思います。
この動画は2020年9月の前半に撮っているんですけど、ちょうど水泳の池江璃花子選手が復帰したというニュースが話題になってまして、今回は中村先生に白血病のことについて伺っていきたいなと思っております。中村先生よろしくお願いします。
中村
よろしくお願いします。
曽我
早速なんですけど、白血病ってニュースとかでもよく聞きますし、なんとなく白血病か、、そうなのね、と私も思いましたし見てる人もそうだと思うんですけど、白血病ってそもそもどういう病気なんですかね?がんの一種なんですか?
中村
がんですね。
曽我
がんなんですね、なるほど。白血病はがんだと。
中村
がんという病気は、細胞が無限に増殖する。ある程度の大きさで、例えば肺がんだったら、留まってくれれば「おでき」ですよね。
曽我
なるほど。
中村
皮膚がんでもある程度の大きさで留まってくれれば、おできですけど。
曽我
おできですね。
中村
どんどんどんどん大きくなっちゃうと、、
曽我
困りますね
中村
困りますよね。そういう状態になるのが、がんです。
曽我
はい。
中村
一般的に塊になるのものは画像診断とかで「塊がありますよ、どんどんおおきくなってますね、がんかもしれませんね」というふうに言われるんだけど、白血病の場合は、血液の中にある細胞が無限に増える。
曽我
えーー、血液の中にある何かしらの細胞があったとしてそれがばーーっと増殖しちゃって、血液だから体を巡っちゃうということですか?
中村
そうです。血液の中にある細胞ってなんだかわかりますか?
曽我
えー、赤血球と白血球と血小板、、。
中村
そうですね、あとリンパ球。
曽我
あ、はい。
中村
で、この白血球とリンパ球、この二つについて話しましょう。これはある意味大人になり切った血液の細胞なんです。
曽我
はい、なるほど。
中村
実は大人になる前の若い白血球、リンパ球、もっと子供というか、そういう状態の白血球リンパ球というのがあるんです。
まだ未熟なので、十分に白血球の役割をするとかリンパ球の役割をしてくれない状態の細胞が無限に増える。
曽我
無限に増えると何が良くないんですか?
中村
例えば白血球の役割って何だと思います?
曽我
白血球は確か、体に入ってきた外敵とか悪いものを退治する役割だったかと、、。
中村
ですよね。だから虫に刺されたとか黴菌が入ってきたとか、傷ついたときにそれ以上大きくならないように白血球がそこの消毒をしてくれて、さらにリンパ球が炎症を抑えてくれて毒が広まらないように働いてくれるんだけども、そういう働きがまだできない。
曽我
若いから、まだ退治してくれないと。
中村
そうです。なので風邪が非常にこじれてしまったりとか、ちょっとした感染症がひどい感染症になってしまったりとか、そういうことがあったり、いま赤血球の話はしてませんけども、仲間なので赤血球も十分に働けなくて貧血になったりとか。まあそういう血液に関する症状というのが白血病の症状として出てくる。
曽我
なるほど。
中村
なので専門的な言い方をすると、元となる、、赤血球白血球リンパ球の元となる、幼いことから若くなって立派な大人になって、というこの過程を「分化」というんです。
分化は1分、2分の「分」に「化ける」と書くんですけど、大人になっていくことを分化と言います。その分化が進まなくなる。
曽我
大きくなれなくなっちゃう?
中村
そうそう、未熟なままで細胞がたくさん外に出てしまう。外に出てしまうというのは、主に骨髄(こつずい)なんですけどね。骨髄で血液の関係の細胞は作られるんだけど、その骨髄で十分に育たないで外に出ちゃう。しかも量的なコントロールができないので大量に出てくる。それは固形のがんと一緒ですよね。固形のがんと同じように大量に出てくるので、、こういう例えがいいかわからないですけど、電車に乗ってるときに、、9月だから普通だとこれから学校が始まって、中学生とか高校生とか電車に乗ってくるとすごい混むじゃないですか。で、小さい子でも、大人しくて普通に会話してくれればいいですけどこれから遠足だとかイベントだとかっていうと、騒がしくなるじゃないですか。ハロウィーンなんか近くなるととんでもない顔した人たちが乗ってきますけど(笑)
まあ、あんな状況が血液の中で起こっていると。
曽我
あーなるほど。白血病はいわゆるどっかに何かできた、というよりは、血の中に増えるとよくないものが全身巡って悪さして、、それが結果として体に悪い作用を及ぼしちゃう、ていうのが白血病のイメージみたいなもので大丈夫ですかね。
中村
そうですね。だからがんという病気を見たときに、白血病っていうのは特別なのかなーとか、肺がんとか肝臓がんとか画像診断上見えるものとどう違うの?というときに共通していることは、細胞が無限に増殖するということなんです。
しかも増殖していく細胞の分化度、大人のなりかたが若いってことなんです。
十分に大人になっていれば、肝臓の細胞はちゃんと肝臓として機能するし肺の細胞も肺の細胞として機能するんだけども、固形がんのほうも、十分に分化しないで大きくなっていくんです。なので肺の機能を果たさない、肝臓の機能を果たさない、ただ騒いでるだけ、暴れてるだけ、みたいな。そういうのが、がん。
曽我
なるほど
中村
それが血液、赤血球白血球リンパ球血小板というような血液の中にいる細胞にも起っちゃった。どこで起っちゃったかというと、血液の細胞を作っている骨髄で起っちゃった。
曽我
なるほど、それが白血病ってことなんですね。
中村
イメージとしてはそう思っていただけると。
曽我
ありがとうございます。
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曽我
続いてなんですけど、ドラマとかね、一世を風靡したセカチュウ、世界の中心で愛を叫ぶとか余命一ヶ月の花嫁とかいろいろ、ヒロインが亡くなるタイプのドラマとかあるイメージがあるんですけど、、あの辺白血病だったんですよ、調べたんですけど。若い人がなってるイメージがあるんですけど、池江選手も若かったし。実際、白血病って年齢による、若い人がなりやすいとか、年齢によるリスクってあったりするんですか?
中村
リスクというと何かそのリスクが原因でなってるとかそういう感じですけども、ちょっとそこは不明ですが、若い時になる白血病と、高齢者になってからなる白血病と、まあ2つピークがあるって感じですね。
曽我
へー、そうなんですか。それは若い方がなる白血病と高齢者がなる白血病ってなにか違うんですか?
中村
白血病の種類としては同じです。
曽我
白血病としては同じなんだけど、、
中村
同じものもあるし、同じじゃないものもあるんです。
曽我
なるほど、禅問答みたいですけど(笑)
中村
というのは、例えば骨髄という言葉があったりリンパ球という言葉があったりするんですけど、骨髄性白血病というのがあるんです。
曽我
なんとなく聞いたことがある気がします。
中村
例えば急性骨髄性白血病、急性はacute、骨髄はmarrow白血病はleukemiaなので
AMLって略したりするんですけど、そういうAMLっていうような分類の白血病は今言われたように若い20代で急に出てきたりとか。Aっていうのはacuteですから急に出てくるんです。それはなくても、高齢者でも急に出てくることがあります。なのでそれがどこで出てくるかっていうのは、理由はわからないけれども、若い人に多いんじゃないかって言われるのは、大抵のがんというのは老化と言われているので。老化が原因、細胞が疲れちゃってコントロールができなくなったことによって、がんなんですよっていう、まあ肺がんだとか乳がんだとか子宮がんだとかっていうものを考えれば、白血病の出方っていうのは特に若い人に出るのでちょっと異質だなという感情をお持ちだと思いますけれども、同じAML
という血液の病気からすると、若い時に出るときもあるし、同じ形の病気が、高齢になって出るときもある。
曽我
へーー。
中村
ということが、観察されていることとして、あるということです。
曽我
観察されていることとしてある、というのは?
中村
病院にくる患者さんの中に、同じ白血病の中に若くて起きるひともいれば、年取ってから起きる人もいますねと、いうことです。
一般にね、その老化っていうことが原因、または悪い環境、自分が作った悪い環境、そこに適応してきた自分の体内の細胞が不良品化し、それがだんだんがん化し、大きくなってっていうそういうステップを踏んでいくというがんをイメージしていると、当然ある程度の年齢、成人になってからがんてなるものですよねと、子供にできるものじゃないですよねというイメージと重ねると白血病はそういうステップを踏まないでいきなり若い時に出ることもあるってことです。
曽我
なるほど。そういう点ではがんではあるけどがんの中でも異質と言えば異質っていうことになるんですね。
中村
そうですね。で、特に骨髄というところは赤血球とか白血球を増産してますから、ものすごい勢いで。そういうところで遺伝子がおかしくなっちゃったりとか。血液細胞の生産工場的なラインが乱れちゃったりとかそういうことが起きると、一度事故が起こった結果というのは急に出るということですね。大々的に。
曽我
大変ですね。なかなかそこで事故っちゃうと玉突き事故でバーンとなっちゃうみたいですね。
中村
そうそう。そういうイメージです。
曽我
あまり年齢によるリスクではないけど、大変なんだなっていう気がしました。
ありがとうございました。
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曽我
続いてなんですけど、もしかしたら先ほどの若い人がなるっていうイメージの話とかぶっちゃうかもしれないんですが、白血病は先天的なものなのか後天的なものなのか、そういうなりやすい因子みたいなものがあったりするんですか?
中村
先天的っていう言葉は、今はね、遺伝子に異常があるとかそういうことで見つけられるんじゃないかというお話かと思うんですけど、そこは遺伝子の異常ということでの観察でいうと、遺伝子がある塊になったときに染色体っていうものになるんですよ。
曽我
あー、YとかXとか。
中村
そうですね。で、その染色体レベルで異常が見つかる、で、そのことによって白血病になっている、という説明はよくあります。
曽我
ほー、それは先天的と言ってもいいものなんですかね。
中村
ただ、生まれた時からの異常なのか骨髄が造血をしている最中にコピーをしている段階で染色体がおかしくなっちゃったのか、そこがわからない。
曽我
なるほど。そうですね。ミスコピーが起こっちゃったらそれは後天的なものになりますもんね。ただ後天的っていうか、これはある地域、九州とか沖縄とかで地域的に異常に発生があるっていうことで国からも研究の対象となっているものとして、成人T細胞白血病というのがあるんですよ。これは、お母さんの母乳とかそういう密接な関係の中で後天的に白血病の原因をもらっちゃう。で、それがすぐ発症するわけじゃなくて、50代になって、60代になって、みたいなときに発症することがある。と言われています。
なので、まあ全員が発症するわけじゃないんですけどね。だけどそういう検査をすることでそういうリスクがありますねと、いうことが発症する前にわかる。
そのときは何もすることはないんだけど、発症したときにはそういうタイプの白血病だから、それなりの治療をしましょうと、いう白血病もあります。
曽我
ちなみに白血病は何種類ぐらい、どれぐらいあるものなんですか?
中村
例えばWHOって世界保健機関ってありますよね。そういうところは国際疾病分類という病名リストを作ってるんですよ。そういうところでいくつあるんですかという質問に答えると、50以上あります。
曽我
あ、そんなにあるんですね、へー。
中村
なんで50もあるんですかって。それは細胞の種類ごとに名前がついてるから。
曽我
あー、なるほど。どの細胞がどうなってとか。
中村
そう、どの細胞ががん化しちゃって、異常に増えてるのか。そういうことをいちいち名前付ければたくさん増えちゃいます。
曽我
なるほどー。
中村
だけどもっと簡単に言えば、白血球系、骨髄細胞系が増えているのか、リンパ球系が増えているのか、という2つぐらいに分かれます。
曽我
なるほど。白血病はいっぱいあるけど大きな種類としては2つあって先天的か後天的かって言うとわかるものもなくはないよっていうイメージで。
中村
そうです。
曽我
ありがとうございます。
中村
で、リンパっていう話になると、リンパ節とかって色々ありますよね、体の中に。
で、リンパ節にいる細胞の塊が大きくなる、これをリンパ腫っていうんです。
曽我
悪性リンパ腫とか
中村
悪性リンパ腫とかありますね。これはまた白血病とは違う区分なんです。
曽我
なるほど。今回は白血病のお話なのでまたどこかでお伺いすることにします。
中村
なので同じようにリンパ球リンパ細胞が増えているんだけども、骨髄のレベルで大元があるというのが白血病。骨髄のほうは問題ないんだけどリンパ腫ができてる、悪性リンパ腫と言われてるのは、悪性リンパ腫というまた別のものがあります。という風に整理してますね。
曽我
ありがとうございます。
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いま白血病のことをわかりやすく色々とさわりだけ伺ってるんですけども、私のドラマの中のイメージとかもあるんですけど、それこそセカチュウとかもそうですけど、だんだん白血病とか進んでくると、キャップとかかぶって、手術着、病院服みたいなのを着て、ちょっと弱ってますみたいなイメージがあるんですけど。実際に白血病ってどんな治療をするのかとか、お金のほうも大変そうなイメージがあるんですけど。白血病になったらほぼ治らないんじゃないかというイメージがあるんですけど、実際治療費ってどれぐらいかかるんですか?
中村
保険診療という意味での治療費は、病院の経費としては何千万とかかってるかもしれないけど高額療養費制度があるので、実際には10万前後とかに負担はおさまりますよね。
曽我
保険診療内でいったら、高額療養費制度があるから、、
中村
でもね、医療費がかかってる、医療資源をすごく使ってるよねっていうイメージですよね。
曽我
すごく使ってるイメージですね。
中村
すごく使ってる。医療資源をたくさん使わなきゃいけないっていうのは、その治療法として、免疫抑制っていうんだけど、いわゆるがん細胞を全部叩く。
曽我
はい
中村
一匹残らず、一匹でも残ってるとそのがん細胞がまたもりもりもりって増えちゃうんで、
白血病の温床になるんで、それを全部叩きましょうと。という治療法が全盛時代にあったんですよ。
曽我
なるほど。私はそこでずっと止まってるイメージありますね。色んな知識が。
中村
まあ病気の種類、その人の状況によっては今でもそうやることもありますけど。
骨髄にいる正常な細胞から悪い細胞から全部叩いちゃうと。そうじゃないとどこに残党がいるかわからないから。という治療法をすると、当然ばい菌に弱い。
曽我
そうですよね、、。
中村
もう無菌室に、体が無菌状態になるから。無菌状態にしちゃうわけですよ。
そこにポンと雑草でも入れたらバッと増えちゃいますよね。だからそれを入らせないように、ICU、集中治療室に入れて、例えばお子さんの場合には、お父さんお母さんでも触れない。
曽我
なるほど、そういうことだったんですね。
中村
そういう状態でまずがん細胞を追い詰めてしまう。ということであとは無菌状態の中で回復を待つ。徐々に回復を待って、がん細胞がいなくなった、で正常な血液白血球赤血球ができて、十分に、これだったら外に出ても大丈夫ですね、という間の経過を見てるのが、ドラマで。
曽我
なるほど
中村
ドラマで大変だという風なイメージを持ってるんじゃないかと思うんですけど。
曽我
なるほどですね。
中村
だからああいう多くのスタッフがいて、いろんな管がついてて、でなんか本人も重症、、重症っていうか
曽我
なんかすごく仰々しくて、周りにいるお医者さんもこういう服とか着てて、みたいな
中村
まるで今のコロナのね、感染者に対する医療スタッフの状況と似てると思うんですけど。
まあたくさん医療資源つかってますよね、みたいな。それはそういう治療のプロセスの一過程ですね。
曽我
なるほど。なんかちょっと話ずれちゃうかもしれないんですけど、骨髄移植とかよく聞いたりするんですけど、単語として。それは白血病とかの治療と関係があるんですか?
中村
骨髄が大元で白血病になっている場合に、骨髄をいま言ったように全部叩いちゃうか。骨髄なくなっちゃうわけですよね。なのでがん細胞が残っていない健康な骨髄を、そこに植え替えましょう。いなくなったところに植え替えましょうというのが骨髄移植なんですよ。
で、昔はこういう骨からゴリゴリゴリってやって、骨髄をとって、この人からもらうんだったら体が拒否しない、
曽我
なんかよく、合う方がなかなかいないからとか、、
中村
血液型でね、A型B型とかよくRhマイナスとかありますよね。あれのもっと難しい適合の組み合わせがあるんですけど、それを事前に骨髄に対しても調べておいて、この人だったら大丈夫ですねと。昔は直接、骨の中に髄がありますから引き出すということをやって、それをさっき言った、細胞を叩いたあとに、今度はこの新しい細胞で血液作りましょうねというのが骨髄移植です。
曽我
なるほど。
中村
だけど今はゴリゴリやったりしないで、採血するだけです。
曽我
そうなんですか!なんかけっこう痛い、、この辺に注射されて取るのめちゃくちゃ痛いみたいなこと思ってたんですけど、今はそんなことないんですか?
中村
そんなことはなくて、採血するだけで採血した細胞の中にある、骨髄細胞というか骨髄になりうる細胞を引っ張ってきて、それを培養する技術ができてきているので提供者、ドナーと言われている人たちの負担は減っています。
曽我
そうなんですね!ずれちゃったけど、気になったもので。
治療費的なことで言うと、その辺もさっき言った高額療養費に含まれる治療なんですかそれは?
中村
もちろん
曽我
あ、含まれるんですね、なるほど。ちょっとひとつ賢くなった気がします。
中村
ただ、さっき言った免疫細胞療法、の中で自由診療の中で免疫細胞療法というものがあるんですけども
曽我
自由診療というのは保険がきかない
中村
保険がきかない。だけどもそういう白血病に対しても効く、免疫細胞療法もありますので。
まあ保険診療の武器はやっぱり抗がん剤なんですよ。
がん細胞を殺しに行く薬なので、本人つらいわけ。
曽我
はい。
中村
池江璃花子さんも大変だったじゃない。だからそういう治療法いやだ、ほかの方法ないの?といったときに免疫細胞療法がある、という時にそれを試したいのであればそれなりに治療費がかかりますよと。
曽我
選択する治療によってお金は当然変わってくるよというところですね。
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