「高齢者がよく発症する」「発症したらもう治せない病気」と思われている病気、リウマチ。何となく「自分には関係ないな」と思っていませんか?
実はリウマチは年々患者数が増加しており、決して高齢者だけの病気ではありません。また新しい薬の開発により今は発症したとしても症状を抑えることができ、ほぼ不自由なく健康な人と同じように日常生活を送れるまで回復できるということもわかってきました。
また、広く知られている「リウマチ」という病名は、実はリウマチ性疾患全体を指す言葉です。リウマチ性疾患とは関節や筋肉にこわばりや痛みをきたす病気全体のことを指すので、多くの人が「リウマチ」と聞いて思い浮かべる関節に症状が出るような病気は、正確には「関節リウマチ」といいます。
この記事ではその関節リウマチという病気について、
・どんな病気なのか?
・どんな人がかかりやすいのか?
・症状はどんなものか?
・治療はどんなものがあるのか?
などをわかりやすく説明します。
決して対岸の火事ではない関節リウマチですが、発症しても症状の悪化を待つだけの病気ではありません。早期発見・早期治療で日常生活に支障が出ないよう、症状の進行を食い止めることも出来るのです。
この記事を読んで関節リウマチについての正しい知識を手に入れれば、万が一「関節リウマチかも?」と疑わしい症状が出た時にもいち早く気付くことができ、すぐに治療を開始することができるでしょう!
目次
1. リウマチとは?
1‐1 リウマチは自己免疫疾患
関節リウマチは、関節に炎症が起こり、腫れや痛みが起こる病気です。炎症がひどくなると軟骨や骨が破壊され、関節が変形してしまう危険もあります。例えば手や足の関節で変形が起こってしまうと曲げ伸ばしが困難になり、歩行など基本的な動作も難しくなってしまいます。
また関節リウマチは「自己免疫疾患」という病気のひとつです。免疫とは誰にでも備わっている自分の体を守る防御反応ですが、本来は異物ではない自分の体自身を何かのきっかけで異物とみなし攻撃してしまうことで起こる疾患です。
1‐2 リウマチは高齢者だけの病気ではない!
関節リウマチは「高齢者がなる病気」というイメージを持っている方は多いかもしれませんが、
実際に関節リウマチを発症する年齢で最も多いのは40歳代です。次いで多いのは50歳代、30歳代ということが分かっており、高齢になってから発症する病気ではありません。最近では20歳代で発症する人も増えています。
またリウマチを発症して現在治療を行っている患者さんの男女比は1:4で、女性の方が男性の3~4倍多く発症している
…という事実はありますが、患者さんの20%は男性であることを考えると決して男性がかからない病気というわけではありません。
1‐3 リウマチの原因はまだ未解明
関節リウマチの原因は現在のところ、はっきりとは分かっていません。ただ「何かの細菌やウイルスが原因で起こるのではない」「家族間での遺伝という可能性はかなり低い」ということが分かっています。
リウマチの原因として、現在のところ有力な見解としては
ホルモンの影響や感染症にかかった経験の蓄積という要因を持っている時、疲労やストレス、感染症、妊娠・出産などのきっかけで発症する
…と言われています。女性の場合、閉経後に病状が悪化することが多いため、ホルモンと何かしらの関係があるのではないかと考えられていますが、はっきりとは分かっていません。また感染症にかかることがきっかけで関節リウマチが発症することもありますが、何のウイルスがその引き金になっているのかは分かっていません。つまり誰にでもかかる可能性がある病気なのです。
1‐4 朝、関節がうまく動かせなくなったら要注意!
関節リウマチの症状は、主に手足の関節に出ることから始まることが多いです。「朝、なんだか関節がこわばってうまく動かせない」ということから関節リウマチの症状に気付き、だんだん痛みや腫れが増し関節を動かすことが困難になっていきます。
また、一つの関節に痛みが出ると、間もなく左または右の関節も同じように痛み出します。このように関節リウマチの症状の特徴は左右対称に症状が出ることです。関節の腫れがひどくなると関節内部では骨の破壊が起こり、それに伴って関節自体が変形してしまいます。
関節リウマチの症状は関節の痛みだけではありません。
疲れやすい、食欲不振、貧血、体重減少など全身に出てくる症状もあります。また関節リウマチを発症していると併発しやすい病気として、むくみやリンパ腺の腫れ、寒いときに指先の血行が悪くなり白くなってしまう「レイノー現象」という症状もあります。
2. 関節リウマチには種類がある
前章で「関節リウマチの症状は関節だけではない」ということを述べましたが、関節リウマチの症状に加えてさらに他の症状も表れる種類の関節リウマチもあります。
2‐1 悪性関節リウマチ
関節リウマチの症状に加えて血管の炎症も伴う病気です。関節リウマチの患者さんの0.6%に発症する病気で、原因は不明です。
悪性関節リウマチの症状は、すでにかかっている関節リウマチの症状が急激に悪化することに加え、全身の血管が炎症を起こします。それにより38℃以上の発熱や毛細血管の破壊による紫色のあざ、筋肉痛、間質性肺炎(肺の肺胞に起こる炎症、からせきや息苦しさを引き起こす)、消化管からの出血、皮膚がただれて壊死を起こしてしまう、などの症状が引き起こされます。
2‐2 若年性特発性関節炎(JIA)
16歳未満の子どもに発症する慢性関節炎です。以前は「若年性関節リウマチ」と呼ばれていました。やはり原因は不明です。発症率は10万人に1人という、とても稀な病気です。
この病気のタイプは2つあります。
全身型 |
関節炎に加えて発熱を繰り返す。“リウトマイド疹”という発疹が表れる。 | 3歳・8歳が発症のピーク |
関節型 |
膝や足などの大きな関節から痛みが始まる。 | 10歳以上の女児に発症することが多い |
タイプの違いに関わらず、関節の痛み、赤み、腫れ、熱を持ったような感じ、こわばりが慢性的に続くという症状が見られます。
2‐3 リウマチに似た症状の病気
関節リウマチは診断が非常に難しい病気です。“この症状があれば関節リウマチ”、“検査結果にこの物質があれば関節リウマチ”という決め手になるものはまだ見つかっていません。そのため「もしかしたら関節リウマチかも?」という疑わしい症状が出た際には出来るだけ早くリウマチ専門医を受診することをお勧めします。
関節リウマチとよく似た関節痛を引き起こす病気は多くありますが、代表的なものをいくつかご紹介します。
病名 | 主な症状など | 症状が起こる体の部位 |
シェーグレン症候群 | 涙が出ない、目が乾燥する、唾液が出ない、鼻血、息切れ、発熱、レイノー現象 | 目・鼻・口の乾燥、手足の関節の痛み |
全身性エリテマトーデス |
全身の倦怠感、皮膚の紅斑(特に頬に蝶が羽を広げた形のものが出るのが特徴的)、関節の腫れ・痛み | 全身・手足の関節の痛み/内臓にも様々な症状が出る場合がある |
混合性結合組織病 | 全身性エリテマトーデス・多発性筋炎・強皮症などの症状が混在する膠原病の重複症候群、手足のレイノー現象、間質性肺炎、手指の腫れ | 全身の関節、手足の痛み |
皮膚筋炎・多発性筋炎 | 筋肉の炎症により筋肉に力が入らない、力が抜けてしまう、手指の皮膚が盛り上がる、むくみを伴う赤い発疹が目の周辺に表れる | 手指の関節、目(発疹) |
リウマチ性多発性筋痛症 | 微熱、食欲不振を伴う肩・腰周辺の筋肉痛 | 肩・腰周辺 |
痛風 | 血液中の尿酸が増えることで関節に強い痛みが生じる。食べすぎや飲酒、ストレスなどが影響すると言われている | 足の親指・ひざ |
変形性関節症 | 関節の痛みやこわばりが生じる。加齢やスポーツなどで関節への過度な負担、体重増加が原因と言われている | ひざ・股関節 |
新しい薬の開発などにより、関節リウマチは早期に適切な治療を行えば症状の進行を食い止めることが出来る…ということがわかってきました。疑わしい症状が表れたときは、すみやかに専門医を受診しましょう。
3.関節リウマチの治療
3‐1 関節リウマチの症状の進行度を表す4つのステージ
関節リウマチの初期症状は、関節の炎症に伴う関節のこわばりや腫れ・痛み・発熱などですが、病気が進行していくと関節内で骨の破壊が起こり、関節の変形が起こる…と前章までで紹介しましたが、関節リウマチと診断されてからどれくらいの期間で関節の変形が起こるのでしょうか。ここではどのように症状の進行が起こるのかをご紹介します。
関節リウマチの症状の進行度は4つのステージで表されます。
ステージ1(初期) | 骨・軟骨の破壊がない状態。X線などで見ると、骨の表面が細かい突起状になっているのが見える。 |
ステージ2(中等期) | 軟骨が薄くなり、関節の隙間が狭くなっている状態。まだ骨の破壊はないが、骨の表面が削れて小さな穴ができている状態。 |
ステージ3(進行期) | 骨・軟骨の破壊がある状態。軟骨がなくなっているので関節を動かすと骨同士がぶつかり、激しい痛みが生じる。 |
ステージ4(末期) | 関節の骨と骨がくっついてしまい、繋がってしまった状態。関節はもう動かすことが出来ない。 |
最近の研究では関節リウマチが発症してから1年以内に関節破壊が急激に起こる、ということがわかってきました。また関節の痛みがなくても内部では骨や軟骨の破壊が起こっている場合もあることがわかっています。そのため関節リウマチの進行を抑えるためには、少しでも早い治療の開始が不可欠なのです。
従来の関節リウマチの治療で使われる薬では骨の炎症を起こりにくくしたり、痛みを抑えたりすることは出来ても、症状の進行を抑えることは出来ませんでした。しかし新しい治療薬では、早期に関節リウマチと診断できて薬を摂取することができれば、骨の破壊が始まる前にその仕組みを食い止めることが出来るのです。
3‐2 関節リウマチの4つの治療法
関節リウマチの治療は薬物療法がもっとも一般的です。しかし他の病気とは異なり関節リウマチのはっきりとした原因はまだ判明していないため、根本的に関節リウマチを治すための治療法は現在のところありません。
今まで関節リウマチの治療として行われていたのは、主に出てきた症状に対してそれを少しでも軽くするような対症療法でしかありませんでした。しかし現在行われている関節リウマチの治療は症状の進行をおさえる新しい薬の開発により症状の進行を抑える、または食い止めることが出来るようになり、関節リウマチを発症しても健常な人とほぼ変わらない生活を送れるようになりました。投薬以外にも併せて他の治療法も取り入れ、病気の進行を抑えるのが現在の関節リウマチの治療です。
①薬物療法 |
例えば“関節内の骨を破壊する仕組みを阻止する薬”など、症状の進行を食い止める効果がある関節リウマチ治療薬は症状に応じて何種類もあるので、自分に合ったものを医師に処方してもらい摂取する。 |
②基礎療法 |
基本的な生活(食生活・運動・睡眠など)を整えストレスをコントロールし、病気の活動を抑える。ただ生活を整える…だけではなく、炎症がひどい場合は安静にする・体を冷やさないようにする・禁煙する、という関節リウマチの治療のために必要な生活習慣を身につける。 |
③リハビリテーション |
関節をスムーズに動かせるよう保つため、リウマチ体操などを実践する。痛い関節を無理に動かす必要はないが、動かせる関節まで動かさないでいると関節は固くなってしまい可動域が狭まってしまう。そしてひどい場合は寝たきりになってしまうこともある。 |
上記3つの治療法を続けても効果が表れず症状が進行してしまった場合、また関節の変形が進み日常生活が困難になってきた場合には、手術を行う場合もあります。
④手術療法 | 炎症を起こしている関節を取り除き、人工関節に置き換える。 |
手術によって関節の機能を回復させ痛みを取り除くことが出来ますが、そのタイミングや状態(手術に耐えうる状態かどうか、症状が活発に進行しているか落ち着いているか、など)は医師の判断に任せることになります。自分の体の状態をしっかりと伝え、主治医とよく相談し、自分に合った治療方針を決めることが必要になります。
関節リウマチの治療にあたっては、①薬物療法では医師の診断・処方が必要になり、③リハビリテーションでは理学療法士や作業療法士の指導が必要になりますが、②基礎療法は自分でしっかりと続けていくことが重要です。しかし自分一人で続けることはよっぽど意志の強い人でも簡単なことではありません。例えば家族の協力を受けたり便利な道具などを上手に使って、無理なく続けることが治療していくうえで必要になるでしょう。
【関節リウマチ患者さんのためのおすすめの道具】
・安静に過ごすために:マジックハンド
お助けハンド:(株)アンツ http://www.ant-s.co.jp/magic_hand/
関節に痛みがある時は無理して動かさず安静にしておくことも必要です。そんな時はこのような道具をうまく使って関節を保護しながら、快適に生活していきましょう。
・体を冷やさないために:遠赤外線ドーム
遠赤王『日だまり』:(株)MOZU https://amzn.to/2H4q3QY
体が冷えると関節周辺の筋肉がこわばり、血流が悪くなることで痛みがひどくなります。またそれによって関節を動かしにくくなります。温めて血流を促せば痛みも和らげることが出来ます。また関節リウマチの治療という側面からも体を冷やさないようにすることは重要です。
遠赤外線なら持続的に体を温めることができるので、痛みの緩和と治療の両面にとって効果的といえるでしょう。
・禁煙するために:禁煙ガム
ニコレット:ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)コンシューマー カンパニー
喫煙は関節リウマチ患者さんに限らず、肺の病気や心臓病などのリスクを高めるものです。合併症があることで関節リウマチの治療が十分に行えないようにならないためにも、禁煙することが大切です。
3‐3 リウマチ科のある病院
実際に自分の家の近くにリウマチ専門医のいる病院があるかどうか念のために調べておけば、いざという時に少し安心できます。また、その後の治療のことも考え「リウマチ科」と併せて「内科」「整形外科」「リハビリテーション科」のある病院を選ぶことをお勧めします。
また病院を検索するとともに「リウマチ専門医」を検索することも出来ます。関節リウマチやリウマチ疾患についてしっかりと知識を持ち、十分な研修を受けて日本リウマチ学会(リウマチ専門医)または日本整形外科学会(認定リウマチ医)から認定を受けている医師を受診することは、関節リウマチの早期診断・早期治療のためにとても重要です。
【リウマチ科のある病院を検索できる】
〇日本リウマチ財団 http://www.rheuma-net.or.jp/
【リウマチ専門医・認定リウマチ医を検索できる】
〇日本リウマチ学会 http://www.ryumachi-jp.com/
〇日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/
さいごに
少し昔までリウマチは「どんどん体が動かなくなって、最終的には寝たきりになってしまう病気」「一生治せない病気」でした。でも最近は医学の進歩により必ずしもそんな病気ではなくなった…という事実は、既にリウマチを発症している方にとっても、もしかしたら今後発症するかもしれないそれ以外の方にとっても、心強いものなのではないでしょうか。
リウマチの早期発見…そのために必要なのは普段から自分の体について、今どういう状態なのか、普段と比べてどうかなどに意識して、気を付けることだと思います。
自分の体にもっともっと興味を持って、大切にしてあげましょう!
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