「過去十年で一番暑い」
「記録的な猛暑」
ここ数年夏になるとその暑さにこんな枕詞が付くことが多くなってきたように思います。
実際に気象庁が発表した過去100年間の夏の気温データでも、特に都市部は気温の上昇が顕著で、東京は100年前より3.2度平均気温が上昇しているそうです。
それに伴い『熱中症』で倒れる方、命を落とす方が増えてきました。
特に今年はコロナウィルスの影響で夏でもマスクをする必要があり、熱中症のリスクが例年に比べ高まると言われています。
この記事で今一度熱中症について知り、予防にお役立てください。
目次
1・熱中症はなぜ起こるの?
1-1 熱中症のメカニズム
熱中症が起こる要因は『環境の要因』『身体の要因』とあり、この二つが重なった時が特に起こりやすいと言われています。
環境の要因 | 気温や湿度が高い・風が弱い・日差しが強い |
身体の要因 |
激しい運動などで体内で熱が生産された 暑さに身体が慣れていない 疲れ、寝不足などで身体の調子がもともとよくない |
私たちの身体は体温が上がりすぎた時は自律神経が体温調節を行い、体温を下げようとします。
身体の体温調節の方法は
・発汗して体温を下げる
・皮膚の表面に血液を集めることによって血液の温度を下げ、体温を下げる
ということを行っています。
ところが、あまりに暑い空間に長く居ると、体温調節機能が乱れ、大量に汗をかくことで体内の水分と塩分が失われ、体液のバランスが崩れてしまいます。
このことによりけいれん、めまい、失神、頭痛、吐き気などの症状が現れます。これが熱中症です。
1-2 熱中症の症状
熱中症の症状には立ちくらみ程度の軽いものから命に関わるものまであります。よく聞く病名だからといって軽視していいものではありません。
分 類 |
症状 | 重症度 |
Ⅰ度 |
・めまい、失神 いわゆる「立ちくらみ」という状態で、脳への血流が瞬間的に不十分になったことを示し、”熱失神”と呼ぶこともあります。 ・筋肉痛、筋肉の硬直 筋肉の「こむら返り」のことで、その部分の痛みを伴います。発汗に伴う塩分の欠乏により生じます。これを”熱けいれん”と呼ぶこともあります。 ・大量の発汗 |
軽度 |
Ⅱ度 |
・頭痛、気分の不快、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感 身体がぐったりする。力が入らないなど。”熱疲労””熱疲弊”と呼ばれている状態です。 |
中度 |
Ⅲ度 |
・意識障害、けいれん、手足の運動障害 呼びかけや刺激への反応がおかしい。身体にガクガクとひきつけがある。まっすぐ走れない、歩けないなど。 ・高体温 身体に触ると熱いと感じる。”熱射病”と呼ばれていた症状がこれにあたります。 |
重度 |
“コラム マスクと熱中症
例年ですと夏はマスクの着用をしていない方が大多数だと思いますが、今年はコロナウィルスの影響で夏でもマスクをしている方が多いと思います。
ですが、夏場にマスクをしていると熱中症のリスクが高まると言われています。マスクをしていると、マスク内で温められた空気しか体内に取り入れることができず、呼吸で身体の熱を放出することができません。また、顔を覆うことで顔の表面温度が上がりやすくなってしまいます。
夏場のマスク着用の際は以下のことを気を付けてください。
・マスクを着用している時は負荷のかかる作業や運動は避ける。
・屋外で人と十分な距離(2メートル以上)が確保できるときはマスクをはずす。
そして、調子が悪いなと思ったら2章以降で触れる熱中症の対策をすぐに実行してください。
2・熱中症の対策
2-1 熱中症予防のために気を付けたい8つのこと
・暑いときや体調不良の時は無理をしない
体調不良のときは身体の温度調節機能も機能しにくく、熱中症になりやすい傾向にあります。
疲労、睡眠不足、発熱。下痢などのときは無理をしないこと。また、糖尿病の人、過去に熱中症を起こしたことがある人も熱中症になりやすい傾向にあるので注意が必要です。
・水分補給はしっかりと。塩分(ナトリウム)を入れると効果的
身体には約0.9%の食塩水と同じ浸透圧の血液が循環しています。
汗をかくとその汗に含まれるナトリウムも失われます。そこに水だけを飲んでしまうと血液のナトリウムの濃度が薄まり「血が薄い」という状態になってしまいます。ですが、身体はもっとナトリウムを取り入れようと水を飲む欲求が強くなります。
この状態が進んでしまうと汗をかく前の体液の状態を回復できなくなり、熱中症の原因になります。
・スポーツドリンクに注意
水分補給にスポーツドリンクを愛飲している方も多いと思いますが、スポーツドリンクはエネルギー補給の目的で糖質を含んでいるものが多く、減量や血糖コントロールをしている方はその効果を減らしてしまいます。
また、気づかないうちに糖質の摂りすぎになってしまう場合もあるので注意が必要です。場合によっては糖質を含まない低カロリーのものを利用しましょう。
・身体を暑さに慣れさせる
高温多湿な環境での体温調節の能力がどれだけ働くかは暑さへの慣れも関係します。
暑くなりはじめの時期から適度に運動(やや暑い環境でややきついと感じる強度の運動を30分程度毎日続ける)を心掛け、身体に暑さを慣らしましょう。その際も水分補給は忘れずに。
・運動する時間帯に注意
運動や身体を動かすときは、日中の暑い時間は避け、朝夕の涼しい時間を利用したほうが熱中症になりにくいです。
また、気温が上がると心拍数が増えるので運動中に心拍数がいつもより多いと感じた時は注意が必要です。また、涼しい時間帯でも木陰などで適宜休憩を取りましょう。
・運動するときは準備は十分に。服装に注意
熱中症を予防するための服装のポイントは
・身体の熱をスムーズに放射させる機能があるもの
・外気からの熱の吸収を抑えるもの
です。通気性の良いものを選び、直射日光下に行くときは色の濃いものは避け、帽子や日傘を活用しましょう。
・アルコールを避ける
アルコールを飲んでも水分補給にはなりません。むしろ脱水が促されるので飲む場所や量には注意が必要です。
・薬を飲んでいる人は要注意
降圧剤である「利尿薬」は尿を出して血液量を減らして血圧を下げる薬なので、身体の水分が失われやすく、熱中症には注意が必要になります。また、糖尿病の薬にも利尿を促す薬があるので、これらの薬を飲んでいる方は夏場は注意が必要です。
2-2 熱中症予防に効果的な食材
豚肉
豚肉には疲労回復に役立つビタミンB1が大量に含まれています。
ビタミンB1は不足すると糖質を分解することができず、疲労物質が溜まり、疲れやすくなってしまいます。特にヒレ肉やもも肉など赤身の多い部分に多く含まれていますので、そこを意識して摂るりましょう。
納豆
納豆の原料、大豆もビタミンB1を多く含む食材です。
汗で失われてしまうカリウムも多く含まれ、発酵食品なので吸収されやすく腸内環境も整います。
ミネラルも摂ることができますので、夏には特に意識して食べたい食材の一つです。
モロヘイヤ
夏が旬の野菜のモロヘイヤ。モロヘイヤには汗をかくと失われてしまうカリウムが大量に含まれています。
また、カルシウムや鉄といったミネラルも豊富で、造血のためのビタミンであるビタミン葉酸も含まれており、夏にぴったりの野菜です。
特に夏は意識して摂るようにするといいかもしれません。
枝豆
なんとなくビールのおつまみのイメージが強い枝豆。
枝豆に含まれる「オルニチン」という栄養素は熱中症予防にも有効です。そしてこのオルニチン、アルコールの分解を促し、肝機能を回復する効果があるので、おつまみに食べるのは理にかなっています。
傷みやすいのですぐに食べるようにしましょう。
2-3 熱中症になりやすい年齢
乳幼児
乳幼児は大人より体温が高くて新陳代謝が活発に行われています。ですが、まだ汗腺が未発達なためうまく体温調節ができません。
そのため、炎天下の車の中など体温より周囲の温度のほうが高い場合は短時間で体温が急上昇し、命の危険に及ぶ場合もあります。
乳幼児の熱中症を防ぐポイント
・顔色や汗のかき方を観察すること
顔が赤く、ひどく汗をかいている場合は深部体温がかなり上昇している可能性があります。涼しい環境下で十分に休息をしましょう。
・適切に水分を摂ることを学習させましょう
喉の渇きに応じて適度に水分を摂ることができる能力を身につけさせましょう
・日ごろから暑さに慣れさせる
適度に外遊びをして身体を慣れさせましょう
・服装に気を付ける
乳幼児はまだ何を着ればいいかの十分な知識がありません。そのため、保護者が熱放射を促す服装を選び、環境条件に応じてどんな服を選べばいいかの知識を身につけさせましょう。
高齢者
高齢者は身体の機能の低下により重篤化しやすい傾向にあります。
高齢になると脂肪がつきやすくなり、逆に身体の中の水分の割合は少なくなります。そのため同じ環境にいても高齢者の方のほうが熱中症になりやすいということになります。
また、高齢者は心肺機能や腎機能が低下しがちなため、熱中症になった場合重篤になる危険が高いのです。
高齢者の場合の注意点
・身体の感覚がにぶくなり、暑さを感じにくくなったり、喉の渇きを感じにくくなっている。
・身体の中の水分が不足しがちになっている。
・体温調節が遅れがちで身体の中に熱がこもりやすくなっている。
・食事量が少なくなるとともに飲水量も少なくなる
そのため、室内が暑くなりすぎないようにエアコンを適切に使用し、喉が渇く前に水分補給をする必要があります。
3・熱中症かなと思ったら
熱中症の初期の段階は自分で休息をとるなどを気を付ければ重篤化せずに済む場合が多いですが、気づかずに意識を失ってしまう。
気づいたときには症状が進んでしまっていたという場合もあります。
熱中症かなと思ったらどんな行動を取ればいいのでしょうか。
3-1 症状の確認
熱中症が疑われるときには適切に処理をする必要があります。
ですが「本人の意識がはっきりしていない」「自分で水分や塩分を摂取できない」「水分補給など何らかの対策をしても良くならない」場合はただちに救急車等で病院に行きましょう。
3-2 現場での応急処置
救急車を呼んだ、呼んでいないに関わらず、速やかな処置は必須です。
・涼しい場所に移動させる
風通しの良い日陰や、クーラーが効いている室内など涼しい場所へ移動させましょう。
・身体を冷却する
衣服を脱がせたり、きついベルトやネクタイ、下着はゆるめて身体から熱を放出させます。
露出させた皮膚に冷水をかけて、うちわや扇風機などであおいで身体を冷やします。
また、氷のうなどがあればそれを首の両脇、脇の下、太ももの付け根の前面など、皮膚の表面に近いところを通っている太い血管を冷やしましょう。
3-3 水分、電解質の補給
本人の意識がはっきりしている場合は電解質を含んだ冷えている飲料を自分で飲ませてください。
この場合は電解質も適切に補えるスポーツドリンクや経口補水液などが最適です。
「呼びかけや刺激に対する反応がおかしい」「応答がない(意識障害がある)」時は水分が気道に流れ込む可能性があるため、無理に飲ませないでください。
また、吐き気等の症状があるときは点滴等が必要になるのでこちらも無理に水分を飲ませることは適切ではありません。
まとめ
ここ数年は命の危険を感じるような暑さが続いていますし、実際に熱中症は命に関わります。
今年はさらにマスクをして誰もが過ごしているので熱中症のリスクも跳ね上がっています。
正しい予防法と対処法を身に付けてこの夏を乗り切りましょう!
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